夕筋海岸
福島県双葉郡広野町夕筋 夕筋踏切

防波堤の壁にもたれ、傍らの石に片足をかけて佇む彼は何を思って海を見ているのだろう。哀愁漂う後ろ姿に、何か物語をあてたくなる。

断崖絶壁が海に迫る夕筋海岸にぽっかりと開いた小さな浜に下りる道のためにつくられた踏切。自動車は通れない。
下りてみても、家はもちろん舟を寄せる港も波と遊ぶ砂浜もなく、ただ海を見て帰って来るだけ。防波堤に遮られて海に入ることもできない。
そこに彼はいた。
何もないけれどそこに少しとどまって時間を過ごしたくなる気持ちもわかる。
誰にも邪魔されず、海だけを見ていたい時がわたしにもある。悲しい気持ちを整理したいとか美しい景色に感動したとかいう理由もなく、ただ無心に広く長い水平線を見ていたくなる。
片足を上げたスカしたポーズは何だろう。自分の意味不明な行動に対する照れ隠しだろうか。問いかけても何も答えは返ってこない。彼は今も海を見続けている。
