2026年10月15日(木)

初音森神社

東京都墨田区千歳2-4-8

狛犬

狛犬は独りぼっちだ。吽形を失って「あ~ぁ」と嘆くように口を開けている。相方がいるはずの場所には「寶録稲荷神社」と書かれた石塔が立っている。

狐

拝殿の裏には「富福稲荷神社」の碑。それぞれ、昭和五年(1930)、同九年(1934)に合祀されたものだ。

境内には稲荷を守るはずの狐もいるが、狐は異様に小さくてしかも守るべき社が見当たらない。お稲荷さんは合祀された初音森神社の社殿に一緒に祀られているのだろう。

狐は体を小さくして遠慮しているように見えるけれど、実は胸の内で「乗っ取ってやったぜ」とほくそ笑んでいるのかもしれない。

初音森神社は元は川向こうの馬喰町で創建されたが、江戸時代初期にここへ移された。移転後も氏子の人たちは川を渡ってお参りに来たそうだ。狛犬の台座には「文化九年壬申歳九月吉日」(1812)と奉納された日付が微かに読める。昭和23年(1948)に旧地に摂社(儀式殿)が建てられ、事実上の本社機能はそちらに戻ったようだ。

狐たちの権謀術数を警戒しつつ、寂しくなった本社を守ってひとり気を吐く狛犬の姿が切ない。

墨田区の説明板 | 馬喰町の分社