2025年1月21日(火)

鎌倉大仏

神奈川県鎌倉市長谷4-2-28 高徳院

正面

武士の都鎌倉の大仏様の、付き従う脇侍もなく一人静かに瞑目して座するストイックなお姿は、戦乱の世の無常を憂い物思いに沈む侍のようにも見える。

与謝野晶子はそのお姿を見て「イケメン(美男子)だなぁ」と歌った(※)。仏さまをそんなふうに言うのは不謹慎であるという批判もあるが、彼女もわたしと同じように大仏の内に凛々しい武士(もののふ)の面影を重ねて見ていたのかもしれないとも思う。

横顔

きらびやかな光背も様々な意匠で飾られた仏殿もなく、雨風をしのぐこともできずに野晒しにされて、全身を覆っていたはずの金箔も落ちてしまった。その姿が栄えては滅びていった武士たちの栄枯盛衰の歴史絵巻を物語っているようだ。

大異山高徳院清浄泉寺という名前はあるけれど、仁王門をくぐった先に本堂らしき建物は見えず、お坊さんがお勤めをしている姿も見えない。だだっ広い境内にただ大仏だけがドカンと鎮座している。

そのまわりを大勢の観光客が取り囲んでいる。ここはどこの国かと思うほどに海外の方が多い。イケメンに会うために、着物姿にめかしこんだ女性も現れた。

※ 「鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな」 詩歌集「恋衣」(1905)所収

鎌倉大佛因由 | 大仏様の藁草履