2025年5月8日(木)

野生狛犬

東京都八王子市上恩方町3429 熊野神社

吽

陣馬山の麓、恩方集落の一番奥。ここから先に家は無いというところにひっそりと隠れた狛犬は、町の狛犬とは違う野生のままの雰囲気を漂わせていた。

阿

苔むした台座に彫られた奉納年は明和八年(1771)。参道に建つ石灯籠には、これに近い安永五年(1776)と享和二年(1802)の日付が見えた。

二百年以上封印されていた異世界に時の結界を越えて迷いこんでしまったような不思議な感覚に襲われる。

狛犬を正面からじっと見ていたら心なしか人の顔に見えてきた。眉間にしわを寄せった様子が、令和の時代まで化石となって生き残った昔の頑固おやじみたいだ。老体ではあるけれど歯はしっかり残っていて鋭い犬歯も見える。

わしらは山の狼の末裔じゃ。頭にくるくるパーマなんかかけて浮かれた街の連中とは違うんだぞ、と気を吐いているようだ。

正面顔 | 石灯籠