2025年7月26日(土)

釜石港

岩手県釜石市只越町 / 魚河岸

津波高

あの日わたしは夜勤前の昼寝をしているところだった。大きな揺れと家族の大騒ぎに起こされて見たTVに、今まさに津波が港を襲う映像が映っていた。

風呂の水があふれるように静かに海水が港に流れ込んでくる。あたりに積まれたパレットやドラム缶がぷかぷかと浮き上がり流れて行く先に、港の外側を走る道路が見えた。まだ水たまりぐらいの浸水を避けて1台の車が走って行く。その上にバイパスか高速道路の高架が見えて、そこから誰かが海を眺めている姿が見えたような気がする。

釜石高架橋

あれがどこだったのかずっとわからないでいる。そして、水際を走り去った車が無事だったのか、高架橋に見えた人影はどうなったのか、ずっと気になっている。

釜石港の魚河岸テラスから駅の方へ戻る途中、県道へ上がる坂道を登るときに、ふとあの時の景色がよみがえってきた。坂道の左(西)側には港の資材置き場らしき広場があり、地上を走る県道の上に港を見下ろして走る国道45号(釜石バイパス)の釜石高架橋が架かっている。断言はできないが映像の場所に似ている気がする。

振り返って見たビルの壁の遥か上の方に「津波浸水深 ここまで」のサインが見えた。あふれた風呂のように見えた海が、その後、北斎の「神奈川沖浪裏」のような姿に豹変して港を襲ったとのだとしたら恐ろしい。

今までに訪ねたどこよりも、震災のリアルを感じた体験だった。

港を望んで建つ高村光太郎文学碑