大津波記念碑
岩手県釜石市片岸町第9地割322番 片岸稲荷公園
起伏もなく交通量も少ない広い道をのんきに走っていたら、前方に人の字型の石碑を見つけてハッとした。あれは震災の慰霊碑に違いない。そうだ、わたしはまだ、「津波浸水区間」の中にいたのだった。
そのことを忘れるぐらい平和な景色の中を、もう10分以上走ってきた。次の「津波浸水区間ここまで」の標識はまだまだ先で、町名は鵜住居町から片岸町に変わっている。
改めて、その被害エリアの広さを思い知らされた。
新しい碑に並んで明治・昭和の津波を記録する碑も建っている。経年劣化なのか津波の被害なのか、石碑に彫られた字は読みにくくなっていて、昭和の碑に大書きされた「昭和八年三月三日津浪記念碑」の文字はわかるものの、明治の方は「南無妙法蓮華経」と読めるばかりで知らなければ津波に関係があるとはわからない。
碑は建てるだけではなく、それを維持し、人から人へと祈りと教訓を伝承していくことが肝要なのだと、人の字型の碑は伝えようとしているように思えた。