FFIGURATI #652
東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura外壁(東急百貨店本店跡地側)
電車の中でも街を歩いていても、みんな携帯端末(スマホ)の画面を見ている。「歩きスマホはやめましょう」と呼びかけるアナウンスが、彼らの頭の上をむなしく通りすぎていく。
わたしはSNSを見ないので、彼らが何を見ているのかがわからない。
「こんな素敵な景色を見たよ」とか「かわいいパフェのお店があったよ」とか、そういう記事を見ているのだろうか。こんなに刺激的な情報があふれる街を自分の目で直接見ることなく、小さな窓から見える世界を徘徊する人たち。
一昨年(2023)閉店・解体された東急百貨店本店跡地に面したBunkamuraの壁面に、大山エンリコイサムのクイックターン・ストラクチャーが踊っているのを見つけた。春のアートイベント(※)で制作されたものだ。
一緒に歩いていた連れ合いは、まわりに林立する工事現場の重機がキリンの群れみたいでおもしろいと言っていた。わたしはその上に拡がる、都会には珍しい青空が素敵だと思う。そんな気付きをアートが喚起してくれる。
でも、「ほらあそこになんかあるよ」と言っても誰も振り向かない。そしてこの景色もいつか消え、忘れられていく。
あぁ、また年寄りの繰り言になってしまった。
※ 「Bunkamuraの未来を照らす新しいアート体験2025」 2025年3月13日 〜 23日