青森県立美術館
青森市安田字近野185
小さな小屋の窓から中を見てギョッとした。花畑の中で三人の少女がうつぶせに倒れている。「密室殺人事件」という言葉が頭をよぎる。
いやいや、まわりに開かれたままの絵本が散乱しているところを見ると、絵本を読みながら仲よく遊んでいるうちについうとうとと眠ってしまったようだ。
小窓から覗いているわたしたちと同じように、いくつかの顔が彼女たちを見守っている。まだ外の世界を知らずみんなに護られて日々を過ごす少女たちの心象風景なのだろうか。
そもそも彼女たちの眠りは、束の間のまどろみなのか、それとも永遠の眠りなのか。昔見た映画の一場面が浮んでくる(※)。
あるいはこれは少女が大人になる直前の一時的な仮死状態、つまり「さなぎ」の状態なのかもしれない。いつかこの狭い部屋を出てはばたく彼女たちの未来が明るいものであるようにと祈る。
美術館の外には、三内丸山遺跡に着想を得たという「あおもり犬」がいる。発掘途中の状態でまだ下半身は埋まったまま静かに眠っている。
見ようによっては太古の眠りを覚まされて地上に現れた地底怪獣のようにも見える。あるいは機が熟したセミの幼虫のように新しい世界へと這い出そうとしている姿なのか。「せっかく眠っていたのに、やれやれなんてこったい。」とも「よいしょ、おとなになるって大変そうだな」とも見える浮かない表情がおもしろい。
(※) ユリシーズの瞳(To Vlemma tou Odyssea)、Theodoros Angelopoulos、1995
(キャプション) あおもり犬 | HULA HULA GARDEN